2025.09.09
靴づくり編12_ソール
今回は、ソール材についてです。
牛革、合成ゴム、EVA、パイロン、PU(ポリウレタン)などが代表的なところかと思うのですが、それぞれの特性について、かいつまんでご紹介いたします。
<牛革_ベンズ>
業界でベンズとよばれるソール用の牛革は厚くしっかりしていてアッパー用の革とは全く違う印象です。


4ミリ位の厚さがありますが、厚さと堅さの出る樹脂を溶かし込んだプールに長期間浸すという昔ながらの方法で鞣されます。
ベンズの優れた点は、
・通気性がある事
・足になじむ事
・それと加工技術が駆使できる点ではないではないでしょうか。
例えばクローズドチャネル加工(※参照
靴づくり編6_グッドイヤー製法その③)とかコバや底面を磨き上げる仕上(※参照
靴づくり編6_グッドイヤー製法その④)等はベンズならではの加工で、伝統的な存在感のある靴になります。

ベンズの欠点は防滑性が低い事、水を吸ってしまう事です。また耐摩耗性も高い方ではないのでオールソール(※参照 シリーズ「革について」 オールソール)しながら使用されるのが一般的です。
話しは寄り道します。
下の写真はオークバーグという種類の贅沢なベンズで


その名の通り、鞣しに樫の樹液が使われており、色は濃い目、革の繊維は密です。
<合成ゴム>

ハイグレードの合成ゴムは防滑性、弾力性、耐摩耗性に優れ靴底には非常に適した材料だと言えます。
欠点は後で紹介するEVA等に比べて重い事、それと経年変化で表面が白っぽくなる事です。この現象をブルームといいますが、白いものは簡単に拭き取れ、品質には影響ありません。
<EVA>
こちらは、Ethylen-Vinyl Acetate(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)の頭文字の様です。
下の写真の場合は白い所がEVA、黒い所が合成ゴムです。EVAは軽量で弾力性に優れる反面、耐摩耗性が弱いので負荷のかかる箇所に合成ゴムを貼り合わせるのが一般的です。

<パイロン>
EVAの上記のような弱点を改良した材料がパイロンで、最近増えてきました。
非常に軽い上に、合成ゴムを貼らなくても日常使用に耐える程度の耐摩耗性があるので、これは当然の流れと言えるでしょう

とはいえ欠点は、耐摩耗性が合成ゴムほどではない事です
<PU>
PUは、EVAやパイロン等と同じ発泡体で、やはり軽いのですが耐摩耗性は優れます。
欠点としては、
原料のタイプによって(PUはエステル系とエーテル系の2種があってエステルの方)は経年変化で
脆く(加水分解)なる事
それから、硬度が高い(堅い)配合の場合は、防滑性が劣ります。
今回は、靴底の材質についてのご紹介でした。
靴をお選びになる際、少しでも参考になる様でしたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。